「売上は前年より伸びたのに、手元に残るお金が増えない」——こうした相談の多くは、売上だけを追いかけて粗利を見ていないところから始まります。値引きで取った売上や、原価の高い商品ばかりが伸びた売上は、数字が大きく見えても利益をほとんど残しません。この記事では、粗利と粗利率の計算式と、月次で粗利を管理するときに押さえたい点を整理します。
粗利と粗利率とは
粗利とは、売上高から売上原価(仕入れた商品の原価や、製品を作るのにかかった材料費など)を差し引いた利益です。損益計算書では売上総利益と呼ばれます。
- 粗利(売上総利益)= 売上高 - 売上原価
- 粗利率(売上総利益率)= 粗利 ÷ 売上高 × 100
- 原価率 = 売上原価 ÷ 売上高 × 100(粗利率 + 原価率 = 100%)
たとえば売上高1,000万円、売上原価700万円なら、粗利は300万円、粗利率は30%、原価率は70%です(数字は説明のための例です)。粗利は、人件費・家賃・広告費といった販売費及び一般管理費を払い、最後に営業利益を残すための「元手」にあたります。粗利が販管費を下回れば、売上がいくらあっても営業赤字になります。
値入率・限界利益との違い
粗利率と混同しやすい言葉が2つあります。どちらも社内で使われがちなので、違いを押さえておきましょう。
- 値入率 — 売価を決めるときに、原価に対してどれだけ上乗せしたかの割合。原価70円の商品に30%を上乗せすると売価は91円で、粗利21円は売価の約23%にとどまる。粗利率を30%にしたいなら、売価は「原価 ÷(1 - 0.3)」で100円にする必要がある
- 限界利益 — 売上高から変動費(売上に比例して増える費用)を引いた利益。売上原価に加えて、販売手数料や運送費のような変動費も引く。採算ラインを出すときの土台で、詳しくは損益分岐点とはで解説している
「3割乗せているから粗利率は3割あるはず」という思い込みは、値入率と粗利率の取り違えです。値決めの基準と管理の指標は、どちらの率なのかを社内でそろえておくと、会議での食い違いを防げます。
粗利率が下がる5つの原因
粗利率が前月や前年より下がったときは、次の5つのどれが効いているかを順に確かめます。
① 値引き・値下げ
受注を取るための値引きや、得意先ごとの特別価格が積み重なると、原価が同じでも粗利率は下がります。値引きは売上の明細に埋もれやすいため、定価と販売価格の差を別に集計できるようにしておくと、どの得意先・どの担当で値引きが増えたかが見えます。
② 仕入値・材料費の上昇
仕入先の値上げや材料費の高騰に、販売価格の改定が追いついていない状態です。原価の上昇は少しずつ進むため、単月では気づきにくく、数か月の推移で見て初めてわかることが多くあります。
③ 商品構成(ミックス)の変化
個々の商品の粗利率が変わっていなくても、粗利率の低い商品の売上が増えるだけで全体の粗利率は下がります。粗利率40%の商品Aと20%の商品Bを売っている会社で、売上の比率がA6割・B4割からA4割・B6割に入れ替わると、全体の粗利率は32%から28%へ下がります(説明のための例です)。全体の率だけを見ていると「どこかで値引きしたのでは」と原因を取り違えます。
④ ロス・廃棄・返品
売れ残りの廃棄、破損、返品、棚卸しで見つかる数のずれは、売上原価を押し上げて粗利を削ります。小売や飲食のように在庫の傷みが早い業態では、粗利率の低下の大きな部分をこれが占めることもあります。
⑤ 原価の計上のずれ
仕入れた月と売れた月がずれると、月次の原価が実態とずれます。月末の在庫を数えずに「仕入れた額=その月の原価」として扱っていると、まとめて仕入れた月は粗利率が急に下がり、翌月は急に上がって見えます。月次で粗利率を見るなら、月末在庫の扱いを決めておくことが前提になります。
率と額は必ず並べて見る
粗利率だけを追うと、判断を誤ることがあります。粗利率50%の商品を月に10万円売っても粗利は5万円ですが、粗利率20%の商品を月に100万円売れば粗利は20万円です。販管費を払い、利益を残すのは率ではなく額です。
- 粗利率 — 値決めや原価の変化に気づくための指標。前月・前年同月と比べて下がっていないかを見る
- 粗利額 — 販管費をまかなえているか、利益の元手として足りているかを見る指標
月次の資料では、粗利率と粗利額を同じ行に並べ、さらに前年の同じ月とも比べると、率が下がった影響が額にどれだけ出たかを一度に読めます。前年の同じ月と比べるときの注意点は前年同月比の見方でまとめています。
全社の粗利率だけでは、どこで利益が削られたかまではわからない
全社の粗利率が前月と同じでも、ある得意先では値引きで率が大きく下がり、別の商品の伸びがそれを埋めているだけかもしれません。粗利は得意先別・商品別・部門別に分けて見てください。売上の大きい順に並べた表に粗利の列を足すと、「売上は上位なのに利益をほとんど残していない」得意先が見つかります。売上を得意先別・商品別に分けて偏りを見る方法は売上分析のやり方(ABC分析)で解説しています。
Excelで続けるときにつまずく点
粗利の計算そのものは引き算と割り算だけです。難しいのは、売上と原価を同じ切り口でそろえて毎月集計し続けることです。
- 売上と原価が別の表にある — 売上は販売管理から、原価は会計ソフトや仕入の記録から出すため、得意先・商品の単位が合わず、明細どうしを突き合わせられない
- 全社の粗利しか出せない — 会計ソフトの試算表は全社の売上原価しか持たないことが多く、得意先別・商品別の粗利を出すには別の集計表が要る
- 率を単純に平均してしまう — 商品ごとの粗利率を単純に平均すると、売上の大きさが反映されず全体の粗利率とずれる。全体の率は「粗利の合計 ÷ 売上の合計」で出し直す必要がある
- 売上がゼロの行でエラーが出る — 割り算の分母がゼロになり「#DIV/0!」が並ぶ。回避の数式を足すほど表が読みにくくなる
- 切り口を変えるたびに表を作り直す — 得意先別で見たあとに商品別で見ようとすると、集計の数式を組み直すことになる
どれも、売上と原価を別々の表で持ち、粗利を集計の後で手作業で組み立てていることが原因です。まずは月次の予算・実績で売上総利益まで出る形から整えたい場合は、登録不要の無料テンプレートを使ってください。月次予実管理表は、売上高と売上原価を入れると売上総利益が自動で計算されます。
売上と原価を同じ明細に置き、粗利は集計で出す
つまずく点を避けるには、粗利を別の表で作らず、売上と原価を同じ形の明細として1か所にためていくのが近道です。
- 売上と原価に同じ切り口を付ける — どちらの明細にも、年月・得意先・商品・部門などのコードを付けておく
- 粗利は勘定の階層で出す — 「売上総利益」の下に「売上高」と「売上原価」を置けば、粗利は入力するものではなく集計の結果として出る
- 率は合計から出す — 粗利率は明細の行ごとに持たず、集計した粗利と売上から計算する
こうしておくと、全社・得意先別・商品別のどの切り口でも、同じ明細から粗利が出ます。部門ごとの利益の見方まで広げる場合は部門別損益とはも参考になります。
ツールを使うとどこが楽になるか
Zidottoは、売上・費用・利益を自由な軸で集計し、予算と実績を並べて見える化できる予算実績管理ツールです。粗利の管理では、次のような点で手間を減らせます。
- 勘定の階層で粗利を自動集約 — 「財務会計」テンプレートは売上総利益の下に売上高と売上原価を置いた勘定の階層で始まり、売上高と売上原価を入れれば売上総利益が集計される
- 切り口の切り替え — 全社の粗利を見たあと、部門・得意先・商品などの軸に切り替えて、どこで粗利が削られたかを確かめられる(得意先・商品は軸として追加できる)
- 予算・実績・見込みを並べる — 粗利の予算と実績を同じ表に並べ、差異が出た月を見つけられる
- フリーシートで粗利率を計算 — ピボットの集計値を数式で引用し、粗利率や前年との差を会議用のサマリ表にまとめられる
- AIによる要約(解釈) — 表示中のデータを日本語で要約し、どの月・どの項目で粗利が大きく動いたかへの気づきを後押し
勘定の階層やそのほかのひな形はテンプレート一覧で、実際の画面は画面ツアーで確認できます。
まとめ
- 粗利(売上総利益)は「売上高 - 売上原価」、粗利率は「粗利 ÷ 売上高 × 100」。粗利が販管費を下回れば、売上がいくらあっても営業赤字になる
- 原価に乗せる値入率と、売価に対する粗利率は別物。値決めの基準と管理の指標は、どちらの率かを社内でそろえる
- 粗利率が下がったら、値引き・仕入値の上昇・商品構成・ロス・原価の計上のずれの5つを順に確かめる
- 率は変化に気づくため、額は利益の元手が足りているかを見るため。率と額は同じ行に並べ、得意先別・商品別に分けて見る
- Excelでは売上と原価が別の表にあることでつまずきやすい。同じ明細に置き、粗利は勘定の階層で集計すると続けやすい