「先月より売上が落ちた」と月次の数字を見て慌てたものの、よく見ると毎年この時期は落ちる月だった——月次の数字を前月とだけ比べていると、こうした読み違いが起きます。季節によって売上が上下する事業では、前の月ではなく、前の年の同じ月と比べるほうが、事業が伸びているかどうかを正しく判断できます。この記事では、その比べ方である前年同月比の計算式と、読むときに気をつけたい点を整理します。
前年同月比とは
前年同月比とは、ある月の数字を前年の同じ月の数字と比べた割合です。2026年9月の売上なら、2025年9月の売上と比べます。
- 前年同月比(%)= 当月の数字 ÷ 前年同月の数字 × 100
- 増減率(%)=(当月の数字 - 前年同月の数字)÷ 前年同月の数字 × 100
たとえば当月の売上が1,100万円、前年同月が1,000万円なら、前年同月比は110%、増減率は+10%です(数字は説明のための例です)。「前年同月比110%」と「前年同月比+10%」は同じ状態を指していますが、社内の資料で両方の書き方が混ざると、110%を「110%増えた」と読み違える人が出てきます。資料ではどちらか一方の書き方に決めて使い続けるのが安全です。
前月比との使い分け
前月比も前年同月比も「何かと比べた割合」ですが、答えてくれる問いが違います。
- 前月比 — 直近で勢いが変わったかを見る。ただし季節要因をそのまま含むため、繁忙期と閑散期の境目では大きく振れる
- 前年同月比 — 季節要因をそろえたうえで、事業そのものが伸びているかを見る。1年前と比べるため、変化に気づくのは遅くなる
月次の会議では、前年同月比で「伸びているか」を確かめ、前月比で「最近の勢いに変化はないか」を補う、という順番で読むと迷いにくくなります。季節による月ごとの差そのものを予算に織り込む方法は年間予算の月別配分のやり方で解説しています。
読み違えやすい4つのポイント
前年同月比は計算が簡単なぶん、数字だけを見て結論を出してしまいがちです。次の4点は、比率を読む前に確かめてください。
① 営業日数・曜日の並びが違う
同じ9月でも、土日祝日の並びによって営業日が1〜2日違うことがあります。営業日が1日違えば、日々の売上が平らな事業ではそれだけで数%の差になります。店舗のように曜日で売上が大きく変わる業態では、1日あたりの売上で比べると、日数の違いによる見かけの増減を取り除けます。
② 前年か今年に一時的な要因がある
前年の同じ月に大口の受注や値上げ前の駆け込みがあった場合、今年の数字は実態以上に悪く見えます。逆に、前年が落ち込んだ月の翌年は「反動」で大きく伸びて見えます。比率が大きく動いた月は、前年のその月に何があったかを一言メモしておくと、翌年以降の読み違いも防げます。
③ 前年がマイナスやゼロだと、比率が意味をなさない
売上ではあまり起きませんが、営業利益のようにマイナスになりうる数字では注意が必要です。前年が赤字(マイナス)で今年が黒字なら、計算上の比率はマイナスになり「悪化した」ように見えてしまいます。前年がゼロなら割り算そのものができません。こうした月は比率を出さず、差額(今年 - 前年)で示すようにします。
④ 小さな数字の比率は大きく振れる
前年10万円だった項目が30万円になれば前年同月比は300%ですが、増えた額は20万円です。全体から見れば小さな項目でも、比率だけを並べると最も目立ってしまいます。比率と差額を必ず隣に並べると、本当に全体を動かした項目がどれかを取り違えずに済みます。
単月だけで判断しない:年度累計と移動年計
単月の前年同月比は、上で挙げたような要因で月ごとに上下します。1か月の結果だけで「伸びた」「落ちた」と判断せず、次の2つとあわせて見てください。
- 年度累計の前年比 — 期首から当月までの合計を、前年の同じ期間の合計と比べる。期の途中で「今期はここまで前年を上回っているか」がわかる
- 移動年計の前年比 — 当月を含む直近12か月の合計(移動年計)を、1年前の移動年計と比べる。毎月12か月分を見るため季節要因が打ち消され、伸びや落ち込みの「流れ」が見えやすい
移動年計を毎月の折れ線にすると、単月では上下に揺れてわかりにくい売上の流れが、なだらかな線で見えるようになります。月別に数字を横へ並べる表の設計そのものは月次推移表の作り方でまとめています。
全体の前年比だけでは、何が変わったかまではわからない
全社の売上が前年同月比100%でも、主力の得意先が落ち込み、新しい得意先がその穴を埋めているだけかもしれません。前年比を見たら、次は得意先別・商品別・店舗別に同じ比較を並べ、どこが全体を押し上げ、どこが足を引っ張ったかを確かめてください。売上を得意先別・商品別に分けて偏りを見る方法は売上分析のやり方(ABC分析)で解説しています。店舗の売上なら、客数と客単価に分けて前年と比べると、来店が減ったのか1回の買い上げが減ったのかが切り分けられます。
Excelで続けるときにつまずく点
前年同月比の計算そのものは割り算1つです。難しいのは、前年と今年の数字を同じ並びで毎月そろえ続けることです。
- 前年のファイルと突き合わせになる — 年度ごとにファイルを分けていると、前年の数字を毎月コピーして貼る作業が発生し、貼る位置を1列ずらすだけで比較が全部ずれる
- 項目の並びが前年と今年で違う — 得意先や商品が増えたり減ったりすると、行の順番がそろわず、隣の行どうしを比べてしまう
- 組織変更で前年の数字が置けない — 部門や店舗を統廃合すると、新しい組織の形で前年の数字を組み直す必要がある
- 前年がゼロの行でエラーが出る — 割り算の分母がゼロになり「#DIV/0!」が表に並ぶ。IFで回避すると、今度は数式が読めなくなる
- 年度が替わるたびに表を作り直す — 「今年」「前年」の列が1年ずれるため、数式の参照を毎年すべて付け替える
どれも原因は同じで、前年と今年を別々の表として持ち、手で並べていることにあります。まずはExcelで売上と予算を月別に並べる形から整えたい場合は、登録不要の無料テンプレートを使ってください。
年月を持った明細を1か所に置き、前年は「並べ方」で出す
つまずく点を避けるには、前年用の表を別に作らず、年と月を持った明細を1か所にためていくのが近道です。
- 年度で表を分けない — 2025年9月も2026年9月も、同じ明細の中の「年月が違う行」として持つ
- 比較は並べ方で作る — 横に月、その上に年を置けば、前年と今年の同じ月が隣り合う
- 項目はコードでまとめる — 得意先・商品・店舗にコードを振っておけば、並びが年ごとにずれることがない
こうしておくと、年度が替わっても明細に行が増えるだけで、表の作り直しや参照の付け替えが要りません。経営会議に出す前年比較の資料をどう並べるかは経営会議の資料の作り方も参考になります。
ツールを使うとどこが楽になるか
Zidottoは、売上・費用・利益を自由な軸で集計し、予算と実績を並べて見える化できる予算実績管理ツールです。前年との比較では、次のような点で手間を減らせます。
- 年度・月を軸にした集計 — 期間は年度・半期・四半期・月の階層で用意されているため、横軸に2年度分の月を並べて、前年と今年の同じ月を1つの表で見比べられる
- 前年を区分として持つ — 「予算・実績・前年」のように前年を区分の1つとして並べ、今年の実績・予算と同じ行で比べられる(「店舗・小売管理」テンプレートはこの3区分で始まる)
- 切り口の切り替え — 全社で前年比を見たあと、得意先別・商品別・店舗別に軸を替えて、どこが全体を動かしたかを確かめられる
- 折れ線グラフ — 表示中の表をそのままグラフにし、前年と今年の月ごとの動きを重ねて見られる
- AIによる要約(解釈) — 表示中のデータを日本語で要約し、どの月・どの項目が前年から大きく変わったかへの気づきを後押し
エリア・店舗別に売上・客数・客単価を前年と並べるひな形はテンプレート一覧の「店舗・小売管理」で、実際の画面は画面ツアーで確認できます。
まとめ
- 季節によって売上が上下する事業では、前月ではなく前年の同じ月と比べる
- 前年同月比は「当月 ÷ 前年同月 × 100」。「110%」と「+10%」の書き方は社内で一方にそろえる
- 営業日数・一時要因を確かめ、前年がマイナスやゼロの項目は比率ではなく差額で示す。比率と差額は隣に並べる
- 単月で判断せず、年度累計・移動年計の前年比とあわせて見る。全体の前年比を見たら、得意先別・商品別に分けて原因を探す
- Excelでは前年ファイルとの突き合わせと年度替わりの作り直しでつまずきやすい。年月を持った明細を1か所に置き、前年は並べ方で出すと続けやすい