月次決算が終わると、次に待っているのが経営会議の資料づくりです。試算表を貼り、予算と並べ、部門別に切り直し、コメントを付ける——毎月同じ作業に半日から2日かかっている、という声は珍しくありません。しかも時間をかけた割に、会議では「で、どうするの?」と聞かれて答えに詰まる。この記事では、中小企業の経理担当者が月次の経営会議に向けて用意する資料を、枚数・並べ方・作り方の順に整理します。
資料は「報告書」ではなく「意思決定の材料」
最初に確認したいのは、経営会議の資料は報告のための書類ではないということです。数字を漏れなく載せることが目的なら、試算表をそのまま配れば済みます。それでも資料を作るのは、経営陣にその場で判断してもらうためです。
判断に必要なのは、次の3つだけです。
- どうなったか — 予算や前年に対して、実績がどれだけずれたか
- なぜそうなったか — ずれを作った科目・部門・商品はどれか
- どうするか — 放っておくと期末にどう着地し、何を変えれば戻せるか
この3つに答えていない資料は、どれだけページ数があっても会議では使われません。逆に言えば、この3つに答える最小限の枚数が正解です。
月次で用意する5枚
中小企業の月次会議なら、次の5枚で足ります。順番にも意味があります。
- サマリ(1枚) — 売上・限界利益・営業利益・現預金残高の4つについて、当月実績・予算比・前年比・累計を並べる。会議の最初の3分で全体像が伝わる枚
- 予実差異(1枚) — 予算と実績の差が大きい順に、科目または部門を上から並べる。金額の大きい順であって、率の大きい順ではない
- 月次推移(1枚) — 主要な項目を月別に横へ並べ、傾向・季節性・段差を見る。単月では判断できないことがここで見える
- 部門別または事業別(1枚) — どこが稼ぎ、どこが食っているかを分ける。共通費の扱いは毎月同じルールで固定する
- 資金の見通し(1枚) — 現預金残高の推移と、今後数か月の入出金予定。利益が出ていても資金が回らない状況を先に見つける
1枚目のサマリだけは、数字の下に3行以内のコメントを付けます。それ以外の枚は数字だけで構いません。コメントを全部の枚に付けようとすると、作成時間が跳ね上がるうえ、読む側も追えなくなります。
差異をどう読むかは予算実績差異分析とは、推移表の設計は月次推移表の作り方、部門別の切り分けは部門別損益とはで詳しく扱っています。
数字の並べ方の基本ルール
同じ数字でも、並べ方で伝わり方が変わります。会議で迷いを生まないための決めごとを5つ挙げます。
- 単位を1つに揃える — 千円と百万円が同じ資料に混在すると、桁の読み違いが必ず起きる
- 予算・実績・差異・達成率の順で左から並べる — 毎月同じ並びにすると、経営陣が資料の読み方を覚えられる
- 差異はマイナスを赤にするだけでなく符号も付ける — 印刷やモノクロ配布で色が飛んでも読める
- 金額の大きい順に並べる — 率で並べると、金額の小さい科目が上位に来て打ち手につながらない
- 税込・税抜を資料の隅に明記する — 途中で変わると過去月と比べられなくなる
そして最も重要なのが、毎月同じ様式で出すことです。様式が変わると、経営陣は数字ではなくレイアウトを読むことに時間を使います。
資料を厚くしない
枚数を増やすほど丁寧に見えますが、会議の時間は増えません。20枚の資料を配ると、経営陣は最初の3枚しか見ないか、全部を斜め読みして何も決まらないかのどちらかになります。追加の分析は「聞かれたら出す」参考資料に回し、本編は5枚に固定するのが現実的です。詳細を持っていること自体は、その場で答えられる強さになります。
会議で必ず聞かれる3つの質問に先回りする
資料を作ったら、配る前に自分で次の3つを聞いてみてください。答えられなければ、会議でも答えられません。
- 「この差はどこから来たの?」 — 差異の大きい科目について、内訳をもう1階層だけ持っておく
- 「このままいくとどうなるの?」 — 累計実績と残り月の予算から、期末の着地見込みを1行で言えるようにしておく
- 「先月も同じことを言っていなかった?」 — 前月の資料で挙げた課題が、今月どうなったかを1行で追う
3つ目は見落とされがちですが、会議の質を最も上げる部分です。前月の指摘が翌月の資料で追われていないと、会議は毎回その場限りの報告会になります。サマリの下のコメント3行のうち1行を、前月の課題の続報に充てるだけで変わります。
見るべき指標そのものを絞り込みたい場合は経営分析の指標とは、資金の見通しの作り方は資金繰り表の作り方を参照してください。
作成の手間はどこに溜まっているか
資料づくりに時間がかかるとき、時間を食っているのは考える部分ではありません。ほとんどが次の作業です。
- 会計ソフトから出した試算表を、資料の様式に合わせて貼り直す
- 予算の表と実績の表を突き合わせ、差異の列を計算する
- 部門別・商品別に切り直すために、集計をもう一度組み直す
- 数字の修正が出たとき、サマリ・差異・推移の3枚を貼り直す
- 前月の資料を複製して、日付と対象月を書き換える
どれも判断とは関係のない転記作業です。ここを削れば、空いた時間をコメント3行を練ることに回せます。締め自体を早める工夫は月次決算の早期化にまとめました。
Excelで作るときにつまずく点
5枚の資料はExcelでも作れます。ただし続けていくと、次の壁に当たります。
- 同じ数字が5枚に散る — 実績を1か所直すと、5枚すべてを確認して貼り直すことになる
- 部門や科目が増えると様式が崩れる — 行を挿すたびに合計範囲を直す必要が出る
- 切り口を変えると作り直しになる — 部門別で作った表を商品別で見たいと言われると、集計から組み直しになる
- 合計の参照ずれに気づけない — 数式が壊れていても表は普通に表示され、間違った数字のまま会議で使われる
- 担当者が休むと止まる — 手順がファイルの中にしかなく、引き継げない
最後の2つは、資料の信頼性そのものを損ないます。Excel管理の限界は予算管理にExcelの限界を感じたら?でも整理しています。
ツールを使うとどこが楽になるか
Zidottoは、売上・費用・利益を自由な軸で集計し、予算と実績を並べて見える化できる予算実績管理ツールです。会議資料の準備では、次の点で手間を減らせます。
- CSV/Excel取込 — 会計ソフトから出した実績を毎月取り込める
- 予算と実績の同時表示 — 差異と達成率を計算し直さずに済む
- 軸の切り替え — 部門別・商品別など切り口を変えても、表を作り直さずに出せる
- 修正の即時反映 — 数字を1か所直すと、関連する集計すべてに反映される
- AIによる要約(解釈) — 表示中のデータを日本語で要約し、コメントに書くべき論点の下書きになる
- Excel出力 — 会議で配る形に整えて持ち出せる
画面イメージは活用シーン、実際の操作は画面ツアーで確認できます。月次の集計に使えるひな形は無料テンプレートで配布しています。
まとめ
- 経営会議の資料は報告書ではなく、意思決定の材料。「どうなったか・なぜか・どうするか」の3つに答える
- 月次で用意するのはサマリ・予実差異・月次推移・部門別・資金見通しの5枚。本編は増やさない
- コメントはサマリの3行だけに絞り、うち1行は前月の課題の続報に充てる
- 単位・並び順・符号・税込税抜を固定し、毎月同じ様式で出す
- 時間を食っているのは判断ではなく転記。明細を1か所に持ち、表は集計結果として出す設計にすると資料づくりが短くなる