配賦

共通費の配賦とは
基準の決め方と、配賦しないという選択肢

2026年8月16日 更新

部門別に損益を見ようとすると、必ず「本社の家賃は誰が負担するのか」「経理と総務の人件費はどの部門の費用なのか」という問題にぶつかります。特定の部門に紐づかないこうした費用を各部門へ割り振ることを配賦といいます。この記事では、配賦基準の選び方と手順、そして「そもそも配賦しない」という選択肢までを整理します。部門別損益そのものの作り方は部門別損益とはにまとめています。

配賦とは何か

配賦とは、複数の部門が共通して使っている費用を、一定の基準で各部門へ割り振ることです。対象になるのは、たとえば次のような費用です。

配賦をしても全社の合計は1円も変わりません。共通費という1か所にあった金額が、部門の列へ移動するだけです。つまり配賦は、税務や決算の数字を作るための作業ではなく、社内で部門の採算を判断するための作業です。目的が判断であるということは、「判断に役立たない配賦はしなくてよい」ということでもあります。

配賦の目的は「正確な部門別利益」を作ることではありません。部門ごとの意思決定を助けることです。基準に唯一の正解はなく、会社が説明できる基準であれば十分に実務に耐えます。

まず「配賦しない」を選択肢に置く

部門別損益をこれから始めるなら、最初から配賦する必要はありません。「共通」という部門を1つ作り、共通費をそこに置いたままにするやり方で、多くの目的は達成できます。

配賦が必要になるのは、「この部門は全社の共通費まで賄えているのか」を問いたくなったときです。撤退・縮小・値上げといった判断が視野に入って初めて、配賦後の利益が意味を持ちます。そこまでの段階では、配賦しない部門別損益で十分に前に進めます。

配賦基準の代表例と向き・不向き

配賦する場合、何を基準に割り振るかを決めます。中小企業でよく使われるのは次の4つです。

基準は「その費用が増える理由」に近いものを選ぶ

どれを選ぶか迷ったら、その費用が増えたり減ったりする理由に近い基準を選びます。家賃は人が増えても急には増えませんが、席を増やすために広い物件へ移れば増えます。だから面積比が合う。逆に、社会保険の事務や採用の手間は人数に比例して増えるので人数比が合う。この対応が付いていれば、部門長に説明したときに納得が得られます。

費用の種類ごとに基準を変えてかまいません。 家賃は面積比、総務人件費は人数比、全社広告費は売上高比、という具合です。むしろ全部を売上高比で押し切るより、種類ごとに素直な基準を当てたほうが説明しやすくなります。

なお、原価計算の世界には補助部門費を配賦する方法として直接配賦法・階梯式配賦法・相互配賦法といった手法がありますが、補助部門どうしのサービスのやりとりまで織り込む方法は中小企業の月次運用には重すぎます。 共通費をまとめて1回で各部門へ配る形(直接配賦)から始めるのが現実的です。原価の考え方そのものは原価管理とはで整理しています。

配賦の手順

実際の作業は4ステップです。最初の3つは1回決めれば終わり、毎月繰り返すのは4つめだけです。

  1. 費用を直接費と共通費に仕分ける — 部門が特定できる費用は配賦せず、その部門に直接付ける(直課)。配賦するのは、どうしても特定できないものだけに絞る
  2. 共通費を性質ごとにグループ分けする — 場所に付くもの・人に付くもの・全社に付くもの、程度の粗さで十分
  3. グループごとに配賦基準を決める — 面積比・人数比・売上高比などを当て、根拠を1行書き残す
  4. 毎月、同じ基準で配る — 基準の数値(面積・人数)は年に1回の見直しで足りる。売上高比のように毎月変わる基準を使う場合だけ、月次で構成比を取り直す

配賦しないものを決めるほうが先です。 直課できる費用まで共通費に混ぜてから配ると、本来その部門が負担すべき金額が他部門へ流れ、部門別損益の意味が薄れます。「特定できないものだけを配賦する」を守るだけで、精度は大きく上がります。

よくある失敗

配賦した数字の読み方

配賦後の部門利益が赤字だったとき、その部門をやめれば会社の利益が増えるとは限りません。その部門をやめても、配賦していた共通費は消えないからです。家賃も経理の人件費も、そのまま残って他部門の負担になります。

判断の材料になるのが貢献利益、つまり「売上 − 変動費 − その部門固有の固定費」です。配賦する前の段階で、その部門が全社の共通費の回収にどれだけ貢献しているかを表します。貢献利益がプラスなら、その部門は共通費の一部を負担できているので、やめると全社の利益はむしろ減ります。

つまり、配賦した数字と配賦しない数字の両方を見られる状態が理想です。変動費と固定費の分け方や限界利益の考え方は損益分岐点とはで詳しく整理しています。

予算にも同じ配賦を通す

配賦は実績だけの話ではありません。部門予算を作るときも、同じ基準で共通費を配賦しておかないと、期中に予実を比べられなくなります。

部門予算の組み方そのものは部門予算のテンプレートはどう作る?、差異が出たあとの読み方は予算実績差異分析とはにまとめています。

Excelでつまずくところ

配賦は表計算ソフトでも作れますが、続けていくと次の壁に当たります。

2つめが特に効いてきます。配賦は元の数字を書き換える作業ではなく、見せ方の1つです。配賦前の明細を残したまま、配賦後の姿も出せる形にしておくのが安全です。Excel管理の限界そのものは予算管理にExcelの限界を感じたら?で整理しています。

配賦を続けられる形にする

Zidottoは、売上・費用・利益を自由な軸で集計し、予算と実績を並べて見える化できる予算実績管理ツールです。配賦の計算基準そのものは会社が決めるものですが、決めたあとに毎月それを回し続ける部分は集計の仕組みで軽くできます。

具体的な画面イメージは活用シーンで、実際の画面は画面ツアーで確認できます。部門別に費用を並べるひな形は無料テンプレートで配布しています。

まとめ

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配賦した数字を、毎月同じ形で見られるようにしましょう。

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