「今期の広告費、あとどれくらい使えるの?」——年度の途中でこう聞かれて、すぐに答えられる会社は多くありません。毎月の予算と実績を比べていても、単月の比較では「今年度の予算をどこまで使ったか」は見えないからです。この記事では、年度の途中で予算の使いすぎや売上の遅れに気づくための、予算消化率の計算式と見方を整理します。
予算消化率とは
予算消化率とは、ある期間の予算に対して、実績がどこまで進んだかを割合で表したものです。
- 費用の場合 — 予算をどこまで使ったか(消化率)。100%を超えれば予算超過
- 売上の場合 — 目標にどこまで届いたか(達成率・進捗率)。100%に届かなければ未達
呼び方は会社によって「消化率」「進捗率」「達成率」とまちまちですが、計算の形は同じです。この記事では費用を中心に「消化率」と呼び、売上の見方もあわせて説明します。
計算式は2通りある
予算消化率の計算式は、何で割るかによって2通りに分かれます。
- 年間予算で割る — 予算消化率 = 年初からの累計実績 ÷ 年間予算 × 100
- 累計予算で割る — 累計の予算比 = 年初からの累計実績 ÷ 年初からの累計予算 × 100
たとえば年間の広告宣伝費の予算が1,200万円で、4月から9月までの累計実績が720万円だったとします。年間予算で割ると消化率は60%です。一方、4月から9月までの予算の累計が540万円なら、累計予算で割った比は約133%になります(数字は説明のための例です)。
同じ実績でも、前者は「年間の6割を使った」、後者は「ここまでの予定より3割多く使った」と読めます。前者は残りの枠を、後者はペースを見る数字です。どちらか一方ではなく、目的に応じて使い分けます。
年間予算で割るときは、経過月数と比べる
年間予算で割った消化率は、それだけでは良し悪しが決まりません。比べる相手は年度のうち何か月が過ぎたか(経過率)です。
4月始まりの会社で9月末時点なら、12か月のうち6か月が過ぎているので経過率は50%です。消化率60%は経過率50%を10ポイント上回っており、このペースで使い続けると年度末には予算を2割ほど超える見込みになります。
- 消化率 > 経過率 — 費用なら使いすぎの可能性、売上なら前倒しで進んでいる
- 消化率 < 経過率 — 費用なら余っている(使い残し・計上漏れの可能性も)、売上なら遅れている
- 消化率 ≒ 経過率 — おおむね予定どおり
経過率との比較は、残りの枠を一目で伝えたい経営会議の場で特に使いやすい見方です。会議資料での並べ方は経営会議の資料の作り方でまとめています。
季節変動がある科目は、累計予算で割る
経過率との比較には弱点があります。予算を12等分していない科目では、経過率どおりに進まないのが正常だからです。
- 賞与は夏と冬にまとめて出るため、賞与月を過ぎると消化率が経過率を大きく上回る
- 展示会の出展料や年払いの保険料は、支払った月に一気に消化率が跳ね上がる
- 売上に繁忙期がある会社では、上期の売上の進捗率が経過率を下回っても計画どおりのことがある
こうした科目は、年初から当月までの予算の累計で割るほうが正しく読めます。月別の予算に季節変動を織り込んでおけば、累計予算はその凸凹を含んだ「ここまでの予定」になるからです。月別の予算の作り方は年間予算の月別配分のやり方で解説しています。
単月ではなく、累計で見る理由
単月の予算と実績の比較は、支払いのタイミングのずれに振り回されます。9月に払う予定だった費用が10月にずれただけで、9月は「予算を大きく下回った」、10月は「大きく上回った」と見えてしまいます。年初からの累計で見れば、このずれは10月の時点で打ち消し合い、本当に使いすぎているのか、月がずれただけなのかを区別できます。単月の差の読み方は予算実績差異分析で整理しています。
予算消化率の見方4ステップ
毎月の締めのあとに、次の順番で確認します。
- 累計実績と累計予算を並べる — 科目ごとに、年度の最初の月から当月までの実績と予算の合計を横に並べる
- 累計予算比で外れている科目を探す — 累計の予算比が大きく100%から離れている科目に印を付ける。金額の大きい科目から見る
- 外れの理由を「時期のずれ」と「本当の増減」に分ける — 支払月がずれただけなのか、単価や量が予定から変わったのかを確かめる。時期のずれなら翌月以降に戻るので様子を見る
- 年間予算に対する残りの枠と、着地の見込みを出す — 本当の増減なら、残りの月の予算を見直すか、年度末の着地見込みを出し直す。見込みの立て方はローリングフォーキャストとはが参考になる
ステップ1と2が「どこを見るか」、3と4が「何をするか」です。消化率の数字を出して終わりにせず、残りの月で何を変えるかまで決めるのが目的です。
Excelで続けるときにつまずく点
予算消化率の計算そのものは割り算1つですが、毎月続けると次のような手間が出てきます。
- 累計の範囲を毎月ずらす — 「4月から当月まで」の合計式を、月が進むたびに1列ずつ広げる必要がある。直し忘れると先月までの累計のまま報告してしまう
- 年度の切り替えで式が壊れる — 4月始まりの会社で暦年の表を使うと、1月で累計がリセットされてしまう
- 科目や部門が増えると表が広がる — 単月・累計・年間予算・消化率を科目ごとに並べると列が倍々に増え、画面でも印刷でも読めなくなる
- 予算の修正が累計に反映されない — 期中に予算を見直したとき、どの版の予算で累計を取っているのかがわからなくなる
まずは予算と実績を月別に並べる形から整えたい場合は、登録不要の無料テンプレートを使ってください。月次予実管理表は4月始まりの12か月で、予算行・実績行に数字を入れると差異と年度合計が自動で計算されます。年度合計の予算行がそのまま年間予算になるので、累計実績をそれで割れば消化率が出せます。表の列の組み方は月次推移表の作り方も参考になります。
ツールを使うとどこが楽になるか
Zidottoは、売上・費用・利益を自由な軸で集計し、予算と実績を並べて見える化できる予算実績管理ツールです。予算消化率を毎月確かめるときは、次のような点で手間を減らせます。
- 年初からの累計に表示を切り替える — 期間を軸に置いた表で「年初からの累計」をオンにすると、各月のセルが年度の最初の月からその月までの累計に変わる。累計の範囲を毎月ずらす式は要らず、年度が変わると0から数え直す
- 予算と実績を同じ表に並べる — 区分の軸に予算・実績を置き、累計の予算と累計の実績を並べて見比べられる。単月の値はセルにマウスを重ねると確認できる
- 見込みで年度末の着地を読む — 「9月までは実績、10月以降は予算」のような見込みを期間一括切替で作り、年度の列で着地を確かめられる
- 構成比で偏りを見る — 表示を「構成比」に切り替えると、費用の合計のうちどの科目・どの部門が何%を占めるかをそのまま読める
- AIによる要約(解釈) — 表示中のデータを日本語で要約し、どの科目・どの部門の動きが大きいかへの気づきを後押し
テンプレートの構成はテンプレート一覧で、実際の画面は画面ツアーで確認できます。
まとめ
- 予算消化率は、予算に対して実績がどこまで進んだかの割合。費用では使いすぎ、売上では遅れに気づくための数字
- 年間予算で割ると「残りの枠」、累計予算で割ると「ここまでのペース」がわかる。目的に応じて使い分ける
- 年間予算で割った消化率は経過率と比べる。季節変動がある科目は累計予算で割る
- 単月の比較は支払時期のずれに振り回される。年初からの累計で見れば、時期のずれと本当の増減を区別できる
- 累計を並べる→外れている科目を探す→理由を時期のずれと本当の増減に分ける→残りの枠と着地を出す、の4ステップで毎月確かめる