人件費計画

人件費計画の立て方
中小企業向け5ステップ

2026年7月31日 更新

多くの中小企業にとって、人件費は費用のなかで最も大きく、そして最も動かしにくい項目です。仕入や広告費は状況を見て絞れますが、給与は下げられません。だからこそ人件費は「使ってから振り返る」のではなく、先に計画しておくことの価値が最も大きい費用だといえます。この記事では、専任の管理会計担当がいない会社を前提に、人件費計画の立て方を5つのステップで整理します。

人件費計画とは

人件費計画とは、これから1年(あるいは数年)で人に支払う費用が、いつ・いくらになるかを見積もったものです。年間の総額だけでなく、月ごと・部門ごとに分けて置くのが実務上のポイントになります。

人件費計画があると、次の判断ができるようになります。

逆にいえば、人件費計画がないまま採用を決めると、その影響が損益に出てくるのは半年後の試算表を見たときになります。採用は取り消しがきかないため、そこで気づいても打てる手はほとんど残っていません。

人件費に含まれるもの

まず「何を人件費として数えるか」を決めます。ここが会社のなかで揃っていないと、計画と実績を比べたときに数字が合いません。一般に人件費として扱われるのは次の項目です。

見落としやすいのは法定福利費の会社負担分

社会保険料は会社と本人が折半で負担します(厚生年金保険料は現行18.3%を労使折半)。健康保険・介護保険・子ども・子育て拠出金・雇用保険・労災保険を合わせると、会社負担分は給与総額のおおむね15%前後になることが多く、給与を100万円増やすと実際の負担は115万円前後になる計算です。料率は年度・都道府県・業種によって変わるため、計画時は必ず協会けんぽや厚生労働省の最新の料率表で確認してください。この会社負担分を計画に入れ忘れると、年間で無視できない差が出ます。

人件費計画の立て方5ステップ

ステップ1: 現状の人件費を洗い出す

出発点は、直近12か月の実績です。給与台帳や会計データから、月別 × 部門別に人件費を並べます。ここで年間合計だけを見ると、賞与月や社会保険料の年度改定といった山谷が消えてしまい、資金繰りの検討に使えなくなります。

部門別に分けておくと、後で「どの部門の人件費が売上に見合っているか」を判断できます。部門の切り方に迷う場合は部門別損益とは?を参考にしてください。

ステップ2: 今いる人の増減要因を織り込む

次に、現在の在籍者について来期に起きる変化を反映します。人を増やさなくても人件費は動きます。

まずは「今の人員のままなら人件費はいくらになるか」を確定させます。この土台がないと、採用の影響だけを取り出して評価できません。

ステップ3: 採用・退職の計画を月単位で入れる

その上に採用計画を重ねます。ここで最も間違えやすいのが、年間の人数だけを決めて年額を12で割ってしまうことです。10月入社の人の人件費は、その期には3か月分しか発生しません。逆に、採用にかかる紹介手数料は入社月にまとめて出ていきます。

ステップ4: 法定福利費を率で載せる

給与・賞与が月別に固まったら、その上に法定福利費を計算します。1人ずつ標準報酬月額から積み上げる方法もありますが、中小企業の計画段階では給与・賞与の合計に会社負担率を掛ける概算で十分なことがほとんどです。

大事なのは精度そのものよりも、率を1か所で管理し、変えたら全部門・全月に一度で反映できる形にしておくことです。率が各所に散らばっていると、料率改定のたびに直し漏れが起きます。

ステップ5: 売上・利益と突き合わせて妥当性を見る

最後に、できあがった人件費計画が会社の稼ぐ力に見合っているかを確認します。よく使われる指標は次のとおりです。

計画した人件費でこれらの指標が過去より悪化するなら、増員に見合う売上計画があるか、あるいは増員時期を後ろにずらせないかを検討します。人件費は固定費として損益分岐点を押し上げるため、損益分岐点とは?の考え方と併せて見ると判断しやすくなります。

立てた計画を「置いたまま」にしない

人件費計画の価値は、立てた時点ではなく運用の段階で出ます。毎月、計画と実績を並べて差を確認し、ズレの理由を押さえておくことが大切です。

差異の読み解き方は予算実績差異分析とは?で、予算全体の組み立て方は予算編成の進め方で解説しています。

Excelでの人件費計画でつまずきやすい点

考え方自体は難しくありません。つまずくのは、たいてい毎月の更新のほうです。

Excel管理全般の限界については予算管理にExcelの限界を感じたら?でも整理しています。

ツールを使うとどこが楽になるか

Zidottoは、数字を「部門 × 勘定科目 × 期間」といった複数の軸で管理し、軸を切り替えるだけで集計し直せる予算実績管理ツールです。人件費計画では、次のような点で手間が減ります。

実際の画面イメージは画面ツアーで、使いどころは活用シーンで紹介しています。

まとめ

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